nAGお客様事例

キングストン大学 Stuart Fitz-Gerald様

お客様事例
業種 大学
ソリューション 気候変動の経済的影響のモデル化
使用された製品 nAG Fortran ライブラリ
使用された関数 線形計画

nAG Fortranライブラリを使用して気候変動の経済的影響をモデル化する

Stuart Fitz-Gerald
(Written May 13th 2007)

スターン・レビュー(Stern 2007)は発表されて以来、地球が不可逆的な気候変動に向かって進んでいくのを回避するための体系的な対策の実施に政府が明らかに失敗したことに対する懸念を煽ってきました。

スターンにより表わされた実態は、実に厳しいものです。もし「現状どおり」の姿勢が継続され、政府による地球規模の協調行動がとられない場合、温室効果ガス(GHGs)は経済破壊および環境破壊をもたらす可能性が大きいです。

スターンの示した事例は非常に説得力があり、適切に研究された科学と強力な経済分析によって支えられています。彼の結論に反論するのは実に難しいです。もちろん、議論の多くは信頼性のある予測に依存しており、スターン・レビューは予測の正確さに注意を払う必要があることを認識しています。にもかかわらず、根底にある真意は明確です。それは、今何かをしなければならないということ、あるいは将来の深刻な影響を予測しなければならないということです。

スターンの見解を経済予報士の視点から検証することは興味深いです。初めにいろいろなシナリオを検証し、世界経済を使用して様々なスターンレジーム(枠組み)のもとに提案された見解を検証します。世界経済の構造は、少数の協調している経済大国と協調していない経済大国の構造にあてはめることができ、これによりどのように結果に影響があるか分析することができます。

有益な、しかし最近では使用されていない、これらの状況をモデリングするためのアプローチは、再帰的線形計画法です。この技法は最初にDay (1963)によって提案され、Day とGroves (1975) によって拡張、改善され、Day と Cigno (1978)の多くの応用で正式に公開されました。環境問題専門家や経済学者が気候変動に対して大きく関心をもつことにより、様々なかたちで現れる経済変数の軌跡をトラッキングするためのこのようなメカニズムが求められます。ところで、nAGはどこで現れるでしょうか?

再帰的線形計画モデルの中心となる要素は、パラメータが前の線形計画の解により順に更新される一連の線形計画を解く能力です。解の値は次に解かれる問題に対して新しい値を提供する更新ルーチンに受け渡されます。シミュレーションは強制的に終わらせることが可能で、例えばn年間のシミュレーションをさせるか、あるいは終点に到達するシステムとして自然終了させることができます。気候のシミュレーションモデルの場合は、世界が滅亡するとき、あるいは経済的視点から経済がもはや発展しないときにこれがあり得ます。先に述べたように、シミュレーションは、プログラムの中でルーチンが提供する更新パラメータを用いた線形計画の解法アルゴリズムの呼び出しをそれぞれのシミュレーション期間で必要とします。

nAG は特に開発やこのようなシミュレーションのテストに貢献する好位置にいます。nAG Fortran ライブラリ(Numerical Algorithms Group 2006)は、プログラムの中で簡単に呼び出すことができる線形計画を解くルーチン一式を提供しています。Fortran 言語はシミュレーションを行うプログラムを生成するための理想的な言語です。繰り返し更新する計算や、おそらく何百にもなる線形計画問題を解くための高速ルーチンへの呼び出しを可能にしています。改訂された Fortran 標準(Metcalf, Reid & Cohen (2004)を参照)の拡張機能は、大量の計算が可能であることを示しています。nAGライブラリにはそれぞれのシミュレーションのパフォーマンスをテストするために使用できる多くのルーチンがあります。

nAG は、一部CHEST 契約のもとで、Fortran 95 コンパイラの拡張試用を通じてこれらのシミュレーション実験の開発に貢献することを快く申し出ました。MacOS 10.3.9が動作しているMAC powerbook 上でシミュレーションは実行されます。この研究は、キングストン大学のキングストンビジネススクールに拠点を置く、Stuart Fitz-Gerald (email id: fitzgerald@kingston.ac.uk)が主導する広範囲に渡るプロジェクトの一部です。

参考文献

Cigno, A. (1978), Population and Natural Resources, in R. H. Day & A. Cigno, eds, 'Modelling Economic Change: The Recursive Programming Approach', North-Holland, chapter 7, pp. 287-308.
Day, R. H. (1963), Recursive Programming and Production Response, North-Holland.
Day, R. H. & Cigno, A., eds (1978), Modelling Economic Change: The Recursive Programming Approach, North-Holland.
Day, R. H. & Groves, T., eds (1975), Adaptive Economic Models, Academic Press.
Metcalf, M., Reid, J. & Cohen, M. (2004), fortran 95/2003 explained, Oxford University Press.
Numerical Algorithms Group (2006), nAG Library Manual, Mark 21, Oxford.
Stern, N. (2007), The Economics of Climate Change: The Stern Review, Cambridge University Press.

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