非侵襲性気管支内フライスルーによる解剖学的可視化

パワフルで柔軟性のある可視化ソフトウエアを使用することにより、National Institute of Health(メリーランド州ベセスダ)の放射線診断士は、数分間の患者検査だけでの非侵襲性(機器を体内に挿入しない)気管支検査の研究を行なっています。 Ronald M. Summers, M.D., Ph.Dは、NIH放射線診断部でCTとコンピュータソフトを使用し、彼が「virtual bronchoscopy」と呼んでいるテクニックを用いて、患者の気管支構造の非常に正確な画像を生成後、その解析をフライスルー技術を利用して行なっています。
Summers氏はペンシルバニア大学で物理学と医学の学位を取得後、放射線実習をミシガン大学で完了し、その後デューク大学で三次元画像処理と可視化技術を勉強しました。彼は以下のように言っています。 「その期間中、私はいろいろな体内構造の3次元モデルのフライスルーをソフトウエアを用いて行なっていました。NIHに放射線診断士として就任後、IRIS ExplorerとSilicon Graphicsのコンピュータを使用し始め、その後コンピュータ化されたモデルを作るプログラム(の作成)を開始しました。
Summers氏のワークステーションはSGI Indigo-2 Extreme(320MB RAM、9GB HD)で、IRIS Explorer(nAGにより提供されるインタラクティブ3次元可視化システム)をその上で使用しています。彼が所属する部のCTとMRI装置は日常の診断用に使用されます。例として現在Summers氏と助手は、家族性高コレステロール血症患者の動脈硬化の発達についての研究をMRIを用いて行なっています。その他には、小児皮膚筋炎(筋肉が炎症を起こしている状態)の子供の筋肉の異常診断をMRIを利用する事により行なっています。
コンピュータ可視化のための主なデータ収集を担うMRIとCT装置はインターネットに接続されており、その出力はSummers氏のワークステーションに送られます。いくつかのスキャンデータより成るデータセットのサイズは70から120メガバイトです。「私はネットワークを通じてデータを転送し、そのデータよりヘッダ情報を取り除き、IRIS Explorerで読み込める3D Uniform Lattice形式のデータを生成します。その後、IRIS Explorer用に私が作成したリージョングローイング(画像処理で使用されるテクニック)を行なうモジュールを使用します。簡単に言うと、データセット内のボクセルをシードとし、リージョングローイングアルゴリズムを用いて周囲のボクセルの結合を行ないます。」
「私の方法では、患者の肺のCTデータセット(約70メガバイト)を使用します。このデータセットは、画像エリア内を縦方向に積み上げた複数の断層画像より構成されます。それぞれのデータ要素は、患者の組織の非常に小さな部分の密度を表しており、したがって70メガバイトのデータセットでは組織密度を非常に多くのボクセルで表しています。」 「私はその後、気道内のボクセルを一つ選択し、そのボクセルとつながっているボクセルで空気で満たされているものを結合するよう、ソフトウエアに指示します。使用されているアルゴリズムは肺内の小さな空気の破片を探しながら、患者内に広がります。処理が終了すると気管支が出来上がっています。」
この時点でSummers氏はこのデータをIRIS ExplorerのIsoSurfaceLatモジュールへ送ります。Isosurface(等値面)とは3次元フィールドにおいての同じ値を面で表現することです。IsoSurfaceLatは3次元スカラー格子データより等値面を生成します。使用されているアルゴリズムでは、レンダリング用にエッジ交差部を三角メッシュとして結合します。(通常は100,000から250,000個の三角形) この手順で気管支壁サーフェースの3次元可視化(データ)が生成され、IRIS ExplorerのRenderモジュールへ送られます。
Renderモジュールは幾何データを表示します。このモジュールは、様々な表示パラダイムが利用可能なInventorのSceneViewerを用いて作成されています。Renderモジュールにはビューモードとピックモードの二つのモードが用意されています。ビューモードではカメラのパラメータを変更する事ができ、透視投影と平行投影の切り替えが行なえます。その他に、一定のアイレベルを保ったままの動きでウォークスルーが可能なWalkビューワー、ビューイングプレーンに添ってカメラ変更が行なえるPlaneビューワー、そして制限された飛行シミュレーションを行なうFlyビューワーなどの機能が用意されています。
「私は、この3次元モデルとFlyビューワーで動き回り、気管支壁の病変を探し出す事ができます。また、狭くなる部分を探し出し、気管支サイズを測る事もできます。このコンピュータ化された方法により病変の計測が可能となります。通常の気管支鏡を用いての計測は、広角レンズを利用しているため正確に行なう事が出来ません。」 Summers氏は以下の点を強調します。「この手順には他にも多くの利点があります。私たちはCTスキャンを行なっているだけで鎮静剤は必要ではありません。患者は2回にわたり15秒から20秒間息を止めるだけです。」 Summers氏は仕事でいくつかのIRIS Explorerモジュールを使用します。一つは二次元格子データを三次元格子データより抽出するOrthoSliceモジュールです。その他には、フライスルーの動画を作成する為にRenderモジュールと接続するAnimateCameraとWriteMovieモジュールです。
「私は、私の”Indigo2 video collaboration”オプションの機能を利用し、ビデオレコーダとワークステーションの接続を行ない、ビデオ機能を利用しています。フライスルーを行なっている間、通常のVHSテープにその様子を記録する事が出来ます。私はしばしばDisplayImageモジュールとWriteImageモジュールを使用してSGIフォーマットにてスライドを作成し、それをSGI Shocaseプレゼンテーションパッケージにインポートします。その後、プレゼンテーション用の35mmスライドを作成することができます。私はこの他に、家族性高コレステロール血症患者の大動脈のフライスルーや、動いている人間の心臓の可視化を行ないました。」