『ビッグバン』状態を再生する

CERN(欧州合同素粒子原子核研究機構)は次世代の加速器の実験用に、nAGの最新世代のグラフィックスとデータ可視化ソフトウェアを採用しました。CERNは、世界における最大の、また、最も複雑な科学実験のいくつかを実行しており、物質が何から構成され、どのような力によって結合されるかを研究しています。
The Large Hadron Collider(LHC)は世界で最も強力な粒子加速器になりうるものであり、物理学者は、物質の根本的な構成要素についてさらに詳しく研究することができます。LHCは陽子のビームをほとんど光のスピードまで加速後、衝突させ、数百の新しい粒子を生成すると考えられます。温度が 1000兆度であったビックバンの直後の状態を再生することによって、CERNは、最も根本的なレベルでどのように自然が作用するかを明らかにしようと計画しているのです。
そのような極端な条件を作成するための施設や、超高精度に結果を分析することは、多くの非常に複雑なテクノロジーにおける進歩を要求する挑戦であります。例えば、超伝導現象、高速エレクトロニクス、スーパーコンピューティング、物質科学、および多くの他学科などにおいて。LHC実験は、地球上のすべての人々がそれぞれ同時に10本の電話を、15年間かけつづけたときと同じ割合のデータを生成すると予想されます。
これらの膨大なデータセットを扱うために、CERNは、標準で利用可能な商用ソリューションを使用し、それにnAGライブラリの既存の使用法を追加したシステムを開発しました。 nAGの可視化プロダクト一式、すなわちIRIS Explorer、 Open Inventor、MasterSuite およびOpenGLを利用することにより、CERNは、高エネルギー物理の研究に専念することができるようになったのです。 これらのソフトウェアは非常に柔軟性があります。(ポイントアンドクリックのビジュアルプログラミングからnAGライブラリを使用したC++/Fortran開発まで)
IRIS Explorerは、3次元データ可視化、アニメーション、およびマニピュレーションに非常に効果的な可視化プログラミング環境です。IRIS Explorerは、多くのPC及びワークステーションプラットフォームで稼動します。OpenGL、Open Inventor、およびMasterSuiteは、3次元グラフィックスのパワーを開発者に提供するグラフィックスライブラリであり、IRIS Explorerのビルディングブロックとしても使用されています。 IRIS Explorerを利用してモジュールを結合することよって、CERNの科学者達は一連のイベントデータを対話的に分析し、その結果をプレゼンテーションや出版物用に可視化することができます。それぞれのモジュールは、IRIS Explorerが提供している大きいライブラリから科学者達が選択したソフトウェアのルーチンです。さらにCERNでは、高エネルギー物理学研究を行うためにCERNを訪れる6500人の科学者が特別に必要とする機能を満たす一連のモジュールを開発しました。彼らは、特有の要求を満たすモジュールを作成するために、nAGのコンサルタントサービスを利用できます。
新しいLHC実験のためのソフトウェアとしてIRIS Explorer、OpenGL、およびOpen Inventorを使うことを決定するにあたり、CERN/ITのOOソフトウェア開発のコーディネーターであるJamie Shiers博士は、以下のように述べています。 “LHCはまさしく長期にわたるプロジェクトであります。これらのツールは、LHC実験を計画する時にも使用されますし、約10年後に利用可能な実験データの分析にも使用されます。その実験はおそらく、約15年間かかるであろうと予想されます。そのような長いタイムスケールを考えると、その計画がより良い方向に変更できることが重要です。
CERNは、独自のソフトウェアツールを今までに開発してきましたが、現在では商業的に開発、サポートされたソフトウェアを使うことの利益を認識してきており、また、IRIS Explorer上で標準化しています。世界中でLHC実験にかかわる他の研究機関も同様なことを行うことが予想されます。フェルミ国立加速器研究所〈アメリカ最大の粒子物理研究所〉は、すでにIRIS Explorerを採用しています。